新世界物語

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 レイラはこの3年間、弟が買い漁っていた厚さ7cmほどある歴史の本を3冊読んで猛勉強していた。この惑星に住む人々の先祖は惑星の外から移民してきた人間であること。その移民の際の生き残りが魔法を初めて使用したこと。ここまでは弟から聞いた話と同じだ。だが今まで読みもしなかった本から新たな知識が得られた。それは、この地域では使われない魔法が別の地域で発達していること。魔法とは異なる技術を使う地域がわずかながら存在していること。それらの技術を合わせて惑星の外に出る方法を模索していること。編み出した方法で実際に惑星の外に出てみたこと。そして、人々が惑星の外に何度も出てそのつど二度と帰ってこなかったこと。そのような内容を頭に入れた際、レイラは弟の興味と知識に驚かされたことを覚えている。  弟の夢を自分が代わりに叶えるということは、すなわち命をかけることでもある。レイラはそのことを胸に秘め、今回の旅に挑んだのだった。 「最初の目的地はイモータリティシティだな」  レイラは古びた地図をかざすと、目的地の方向を確認した。イモータリティシティとは惑星の外に出ても生きられるように身体に施す魔法の研究が行われている街だと歴史の本の一冊に載っていた。本によれば、もともとは不老不死の研究を行っている街のようで、1000年に一度だけ街に飛来してきた、伝説の不死鳥フェニックスの生態をそのつど研究し、厳重に研究結果を保存して代々の世代に伝えていったそうである。フェニックスは1000年に一度しか訪れないため、次の機会に訪れるまではフェニックスの生態をライトニングで可能な限り再現する研究が行われているようだ。その再現率はいまだ3割にも満たないとされる。  レイラは草原を歩み進めながら、疑問に思うことがあった。不死の研究をしていれば世界中が騒ぎになるのではないのかと。 「ま、何はともあれ、話は街に着いてからだな」  レイラは頭の内を切り替え、再び草原を歩みだした。  草原を抜けると、天を覆うくらいに伸びた森林の中に入った。木々が風で揺られているのか音があたりで鳴り渡っており、陽の光は入らず、代わりに下には湿った大地が広がっていた。レイラは地面の感触を皮靴越しに感じると、ため息をついた。 「これじゃあ、きりがない……街まであとどれだけあるんだ?」
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