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「我が国では、黒い神ザラザルラに奉仕するため、ムエゲの祭祀を執り行うのが古来からの慣わしです。これは一人の男を供物として、それを七名の狩人が追うというもの。その七名のうち、みごと供物を捕らえ、確保し続けた者が、勝者として陛下から執政官の地位を賜るのです」
そして今度はキレキロが。
「供物は異世界の者を当てることにしている。気力・体力・知力ともにすぐれた者でないと、三日とたたぬうちに追手につかまってしまうからな。その点において、そちは及第点に達したというわけだ。こちらより、そちの動向を観察して、この男なら申し分ないと判断したわけだ」
「じゃあ、あの、誰かに見られている感覚は?」
ようやく事態の異常さに気づいた桃太。
ミケは相変わらずの脳天気な物言いを変えない。
「いいですよ、その勘の良さ。我々も探すのに苦労したのですよ。もろもろの条件をそなえた者はなかなかいませんから」
ただ立ち尽くす桃太。
ゾア王が無表情に言い渡す。
「という訳だ。わかったか? では、この世界について教えてやれ」
「ちょっと、待って」
「ん?」
「なんかよく分かんないけど、あなたたちがやっていることは犯罪ですよ。誘拐、そして監禁。こんなこと許されない。ここはどこですか? 日本? 外国? たとえ外国であっても日本大使館があるはず。ボクはこのことを問題にしますよ」
室内には沈黙が広がった。
やがてゾア王がうんざり顔で口を開いた。
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