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「なんだ、こいつの物分かりの悪さは。本当に供物たる資格があるのか?」
「いや。陛下。彼の立場に立てば無理もございません。もう少し、ていねいに説明する必要があると存じます」
「私もキレキロ様に同意いたします。古の例によりますと、まるで錯乱してしまって使い物にならなくなった者もいたとか。むしろ、この少年の反応は気丈と呼ぶべきでございます」
「そうかぁ?」
* * *
この時、伝令がしずしずと入ってきた。
「法務官より奏上がございます。ただいまより、処刑の儀が始まりますが、陛下はいかがあそばしますか、とのことです」
「おうおう。アレは今日だったか。いかん、いかん、大事なことが二つ重なってしまった。どうしたものか?」
意見を求められて、ミケとキレキロがこもごも答える。
「こちらを優先すべきと考えます」
「さよう。ムエゲの祭祀のほうが重要でございます」
ゾア王は視線を空中に彷徨わせた後に、ニヤリと笑った。
「いいことを思いついたぞ。オイ、少年。オマエも来い。面白いものを見せてやる」
* * *
王宮の北門前の広場には制服姿の兵士が一列に並んでいた。
かなたには群衆が集まっている。
ゾア王、桃太、キレキロ、ミケは城門の櫓に登った。
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