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「それを『魔法』と言ってしまえば、最も簡単な説明になるわけです。だから、我らの技術も『魔法』ということで、今のところは納得してください」
「うぅむ……」
「たとえば。私とキミは、今ふつうにしゃべってますよね?」
「夢の中だから話が通じていると、最初は思っていました」
「キミたちの世界には自動翻訳機というものが存在しますよね」
「パソコンの翻訳ソフトのことですか? 詳しくありませんが」
「まさにそれ。キミの世界の自動翻訳機は、異なる言語双方の語彙を機械に溜め込んだ上で、文法という規則に応じて交互に変換するものです。確かに優れた装置です。が、これだと、事、すなわち実体、と切り離された言葉、すなわち表象のみしか処理できません。つまり、心が置き去りになるわけです。言葉の意味を左右するのは心なのにね」
「はあ……」
「我らの世界では、心の作用も解析した上で言語の翻訳をする技術が確立しているのです」
「ははあ……。でも、どうやって?」
「キミの体に埋め込んだ魔具によって、です」
「ヘ?」
「埋め込んだのですよ。キミがこちらの世界に来た最初の日に。眠っていたから気づかなかったのでしょうが。……ア、言い忘れた。キミは三日ほど眠りこけていたんですよ」
桃太の胸の奥で怒りの炎が灯った。
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