第1話 ある日突然、桃太が消えた

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 気色悪い微笑みを浮かべた桃太だったが、不意に、あらぬ方角を振り返った。 「母さん? いるの? まだ帰ってないか。おかしいなぁ。やっぱり、神経が過敏になってるのか?」    *   *   *  暗い室内の壁一面に桃太が映っている。  それを視聴する異装のメガネ少女。 「そろそろ収穫時期ですかねェ。気づかれて、警戒されて、逃げられでもしたら、私が陛下に叱られちゃいますから。うふ、うふ、うふ」    *   *   *  夜の桃太の家。  革張りソファで法律雑誌を読む父親。母と姉はおしゃべりに興じている。  風呂あがりの桃太がドアを開ける。 「アレ? 何で姉ちゃんが?」 「たまには帰ってきてあげないと。親孝行よ、親孝行」  母は娘の真意を見透かして、言う。 「食費を浮かすためでしょ」 「どうして娘の言葉を素直に受け取れないのかなァ」  この時、桃太がおずおずと口をはさんだ。 「母さん、お願いがあるんだけど。兄さんがパソコンを買い換えるって言ってたよね? 『古くなったヤツ、捨てるんならもらってあげてもいい』って言っといてよ」 「『もらってやる』じゃないでしょ。『ください』でしょ。く・だ・さ・い」 「自分で直接頼めばいいじゃないの」  母も姉ももっともなことを言う。     
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