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気色悪い微笑みを浮かべた桃太だったが、不意に、あらぬ方角を振り返った。
「母さん? いるの? まだ帰ってないか。おかしいなぁ。やっぱり、神経が過敏になってるのか?」
* * *
暗い室内の壁一面に桃太が映っている。
それを視聴する異装のメガネ少女。
「そろそろ収穫時期ですかねェ。気づかれて、警戒されて、逃げられでもしたら、私が陛下に叱られちゃいますから。うふ、うふ、うふ」
* * *
夜の桃太の家。
革張りソファで法律雑誌を読む父親。母と姉はおしゃべりに興じている。
風呂あがりの桃太がドアを開ける。
「アレ? 何で姉ちゃんが?」
「たまには帰ってきてあげないと。親孝行よ、親孝行」
母は娘の真意を見透かして、言う。
「食費を浮かすためでしょ」
「どうして娘の言葉を素直に受け取れないのかなァ」
この時、桃太がおずおずと口をはさんだ。
「母さん、お願いがあるんだけど。兄さんがパソコンを買い換えるって言ってたよね? 『古くなったヤツ、捨てるんならもらってあげてもいい』って言っといてよ」
「『もらってやる』じゃないでしょ。『ください』でしょ。く・だ・さ・い」
「自分で直接頼めばいいじゃないの」
母も姉ももっともなことを言う。
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