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「なんか、やたらとボクに説教したがるんだよね。東大に現役で合格したことが完全に人格を歪めたね。『エリートであるオレの意見を聴け。愚民め』みたいな感じで、当然の権利のようにアレコレ言ってくるんだ。遊んでないで勉強しろとか。東大以外は大学じゃないとか」
「そりゃ、あなたが勉強そっちのけで、合気道だったかに入れ込んでいるからでしょ。お母さんも、お兄ちゃんと同じで……」
「じゃ、お願いします」
桃太は最後まで聞かずに出て行った。
姉の市子はキッチンに。
残された母・八重子は不満をあからさまに見せて亭主に向かう。
「おとうさん。桃太のあの変なアレ、止めさせてくれない」
「変なアレ?」
「ホラ、いつも庭先でやってる、棒をブンブン振る、アレ」
「ああ。素振り。別にいいじゃないか」
「でも。一人でブンブンやっているのを見ると、なんか変。気持ち悪い」
「いいじゃないか。男の子なんだから、ああいうのに熱中するんだよ。放っといてやれよ」
「あの変なお爺さんに会ってからだわ。桃太がおかしくなったのは」
「変なお爺さん? ああ、あの合気道の先生ね。確かに変な爺さんではあるな」
「おとうさんが、あの人のセミナーに桃太を連れて行ったから。すっかり感化されちゃって」
「ううむ。あれは意外だったね。波長が合っちゃったんだね。でも、あの人、変な人ではあるけど、結構なインテリだよ。一種の学者だよ。面白い話が聞けると思って桃太も連れて行ったんだが」
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