第1話 ある日突然、桃太が消えた

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「お兄ちゃんもお姉ちゃんも、ちゃんと育ってくれたのに。桃太は、なんかフラフラしてるのよね。お父さんから何か言ってやってもらわないと」 「まあ、いいじゃないか。上の二人は優等生なんだから、桃太ひとりくらい、規格外でも」  この時、市子がキッチンから顔だけ出した。 「桃太は昔から、一度なにかに熱中すると他は何も見えなくなる子だったじゃない。だから、誰がなに言っても耳をかさないから」    *   *   *  深夜。  ベッドに横たわる桃太。 「あれ? また起きちゃった。なんか一時間おきに目が覚めてるような」  寝返りを打つ桃太。ドアと窓を交互に眺める。 「視線を感じる。感じるぞ。なんだ、この気持ち悪さは。背筋がゾクゾクする。ウワッ、鳥肌!」  起き上がる桃太。  部屋全体が歪む。  ベッドも床も液状化し、叫び声だけを残して桃太を飲み込んだ。    *   *   *  桃太の部屋のドアを開ける父・哲郎。    哲郎の後ろには八重子と市子が。 「どうした! 桃太?」 「桃太? 桃太?」  三人は、無茶苦茶に乱れた室内を呆然と眺めるしかなかった。    *   *   *  暗闇の中、猛烈な速度で落下する桃太。 「夢? なに、これ? 気持ち悪ッ!」
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