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「お兄ちゃんもお姉ちゃんも、ちゃんと育ってくれたのに。桃太は、なんかフラフラしてるのよね。お父さんから何か言ってやってもらわないと」
「まあ、いいじゃないか。上の二人は優等生なんだから、桃太ひとりくらい、規格外でも」
この時、市子がキッチンから顔だけ出した。
「桃太は昔から、一度なにかに熱中すると他は何も見えなくなる子だったじゃない。だから、誰がなに言っても耳をかさないから」
* * *
深夜。
ベッドに横たわる桃太。
「あれ? また起きちゃった。なんか一時間おきに目が覚めてるような」
寝返りを打つ桃太。ドアと窓を交互に眺める。
「視線を感じる。感じるぞ。なんだ、この気持ち悪さは。背筋がゾクゾクする。ウワッ、鳥肌!」
起き上がる桃太。
部屋全体が歪む。
ベッドも床も液状化し、叫び声だけを残して桃太を飲み込んだ。
* * *
桃太の部屋のドアを開ける父・哲郎。
哲郎の後ろには八重子と市子が。
「どうした! 桃太?」
「桃太? 桃太?」
三人は、無茶苦茶に乱れた室内を呆然と眺めるしかなかった。
* * *
暗闇の中、猛烈な速度で落下する桃太。
「夢? なに、これ? 気持ち悪ッ!」
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