2人が本棚に入れています
本棚に追加
■ 異世界には異世界の法が
ここは時空を超えた異世界。
天然の岩山をくり抜いて作った王宮。その中の一室。桃太は寝台に横たわっていた。
桃太の顔を心配そうに窺うのは、あのメガネの少女。
不意に、桃太のまつ毛がピクリと震えた。そして目を開けると、体を起こした。
「う……。あれ?」
「よかった。無事、目を覚ましてくれて」
ニッコリ笑った少女の口元から牙がのぞく。
「エッ! 牙?」
「では参りましょう。陛下も待っておられます」
「ヘーカ?」
「さあさあ。着替えて、着替えて」
少女は準備してあった服をベッドに置いた。それは、桃太にとっては、まったく見慣れない装いだった。
「なに、この服?……」
* * *
だだっ広い謁見の間。床が鏡のように磨かれている。
玉座でふんぞり返っているのは王宮の主、ゾア王である。
桃太が、メガメ少女に先導されて入ってきた。そして、指示されるままに片膝をつく。
ゾア王が大きな口を開けた。
「ようこそ。我が国に、モモカワ、ええと……、モモタ」
その大きな牙、オレンジ色の髪に桃太の目が釘付けになる。
「コスプレ大会? 夢にしては生々しいけど」
「夢ではない」
最初のコメントを投稿しよう!