第1章

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★第1話 時空を越えて連れ去られて ○ 高校構内 (昼休み)    自転車置き場が見える通路。    百川桃太と滝田が向かい合っている。    離れたところに梶谷。 桃太「そこから手刀で打ちかかってこい」 滝田「今日もかよ。もうウンザリなんだけど」 桃太「いいじゃん。付き合ってくれても。さ、かかってきな」 滝田「だから、時代劇じゃあるまいし、なんでこんな不自然な攻撃をするんだよ? 普通、喧嘩になると、グーパンチで殴りかかるだろうが」 桃太「それは話せば長くなる理由があるんだよ。ホラ、早く、早く」 滝田「ハイハイ。分かりました。じゃあ、いくぞ。いくからな!」 桃太「よし。ここで手首をつかまえて、体の転換をして……。アレッ?」 滝田「どうした、合気道の達人?」 桃太「おかしいな。オマエ、力いれすぎだ。そんなにガチガチに頑張られると、小手返しがかからん」 滝田「普通は、力を入れてこらえるだろうが。っていうか、もういいだろ。離せよ」 桃太「アッ!」 *** 尻もちをつく桃太。 離れた所で雑談していた女子生徒たちの視線が一瞬、彼に集まる。 小首を傾げて立ち上がる桃太。 *** 桃太「おかしいなぁ。技がかからない。なぜ?」 梶谷「『なぜ』もなにも、明白かつ単純にオマエが下手だからだ。これまで何十回もやったけど、成功したことないだろ。いい加減、真実に気づけ」 滝田「現実を見ろ、百川桃太。キサマに合気道は向いていない。だいたい、合気道やってるヤツってオタクっぽいよな。ウンチクばかり多くてさ。桃っちも合気道に凝りだしてから、やたらと理屈を言うようになったし。正中線がどうのこうのとか、剣の理合がどうのこうのとか。なんじゃそれは?」 梶谷「ずっと、少林寺拳法やってたんだろ。そっちに戻ったら」 滝田「そうだ。桃っちには、ああいう殴る蹴るが向いてる。ほら、もう一回あの足刀蹴りを見せてくれ」 *** 桃太は滝田の鼻先ギリギリで足刀蹴りを止めた。 滝田、ヘナヘナと尻もちをつく。 *** 梶谷「オオッ! 美しい」 桃太「フンッ。蹴り技は今日限りで封印する。オレは合気に生きるんだ。……ん!」 *** 突然あらぬ方角を振り返る桃太。 *** ○ 異世界にある王宮・鏡の間 (夜)    暗い室内の壁一面に桃太たちのライブ映像が映っている。    その前に立つ博士のミケ。
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