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「…………神崎さん、なんでもかんでもふざけていたら、いつか痛い目みますよ?」 「痛い目って?」 「貴女が痛いと思うような羽目です」 「え。やだ」 「なら自粛して下さい」 「う~………」 「自粛、して下さい」 「……分かったよ」  しぶしぶ、といった感じだったが、取りあえずは返事を貰えた(言質を取った)のでよしとする。 「神崎さんて、意外と素直なんだね」  晴宮がコロッケを口に入れながら言う。  どうやら興味が逸れたらしい。 「意外とってなんだ、意外とって。アタシは素直だっつの」  腕を組んで「不服だ」と意思表示する神崎さん。 「え、でもさっきらぶちゃん先生に不満そうにしてたじゃん」  タコさんウインナーを箸でつまみ上げながら言ったのは雲野だ。 「あれはらぶちゃんが偉っそう~に言ったからムカついたんだ」  つん、とそっぽ向く神崎さん。 「それを人はひねくれと言う……」  ぽそりと呟くように小野寺がもらす。 「おいそこ聞こえてるぞ」  神崎さんが大人げなく反応する。  そんな彼女たちのやりとりを見て、僕は知れずため息を吐いた。  なんとかそっち(恋愛)方面の話にならなくてよかった。  僕の場合。  一般的に『青春』と呼ぶそれは──  『青』と言うよりは『黒』で。  『春』と言うよりは『冬』で。  ──しかないのだから。
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