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見ている限りの様子では、何を仕事にしているのかさっぱり分からない。校内をうろつき、お昼時は生徒に混じって談笑、あるときは校舎の傍に植えてある木の上で寝ていたり、学校の事務員と雑談していたりするのだが……何と言うか、動きが自由すぎる。これでは本当に仕事をしているのかどうかも怪しい。
学校でそんな束縛されない仕事ってあるか……?
そんな疑問を頭の片隅で考えながら、社会科教員室の扉を開ける。
「お疲れ様」
室内には氷室先生が居て、彼は僕を見とめると短い言葉で労ってくれた。
「お疲れ様です」
僕も言葉を返しながらデスクに着き、教材を置く。
「遅い戻りだね。何かあった?」
「ええ、まぁ……。教室を出る前に数名の生徒に質問攻めに合いまして……僕の教え方では内容が上手く伝わらなかったようです」
言いながら、僕は苦笑した。
質問をしに来たのが一人二人ならまだいい。だが、四人五人ともなると、己の指導力に自信が無くなる。
「……ははぁ、小金餅先生は人気者だね」
にやり、として笑って見せる氷室先生。
…………はい?
「えっと、それはどういう……?」
「授業の内容が分からなかった、と言いつつ、その目的は小金餅先生とおしゃべりがしたかったんだと思うよ」
要は口実に使ったんだね、と氷室先生は言う。
うん?
授業に関する質問が、僕としゃべるための口実……?
「いや、おしゃべりしたいだけなら普通にその辺の適当な話題でも拾って話しかけてくるんじゃないですか?」
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