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遠くから声がして、そちらを見ると、数メートル先の廊下から、今まさに僕の頭をいっぱいにしている人物がこちらを指差していた。
見つかった。
……いや、別に逃げていたわけでもないんだけど。
彼女はダッシュで僕のところへ来て例によって例のごとく、僕の首へとその白く細い腕を掛けてきた。ノーマルでの身長差があまり無いので、ヒールを履いている彼女の方がその分目線が高い。ってかヒール履いてダッシュする人、初めて見たよ。
「なーにしてんのー?」
テンションがやや高めの抑揚でそう訊いてくる神崎さん。
なにか良いことでもあったのかな。
「控え室に戻る途中ですが」
実はつい先程で午前中の授業を終えたので、僕は社会科教員室に退却しているところだったのだ。
「ん、そか。で、お昼は?」
「これからです」
「なに? 持ち弁?」
「持ちです」
「よし、んじゃ、取りに行こう!」
「何事ですか」
「食事だよ。せっかくだし、一緒に食べようぜっ」
…………男前な誘い方だなぁ。
「分かりました」
僕は神崎さんを伴って社会科教員室へ戻り、教材を置きつつ弁当を取った。そして、「中庭で緑を眺めながら食べたい」という神崎さんの希望で、A棟(職員室や図書館のある校舎)とB棟(生徒の教室がある校舎)の間にある中庭、その藤棚の下で弁当を広げることになった。
緑のカーテンの下、弁当を広げる。
日陰が涼しい……。
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