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彼女は艶やかなロングヘアーを風になびかせ、窓の外を見つめていた。
僕は身体が一瞬固まった。
教室の入り口で立ち尽くしていたのが不自然だったのか、中谷裕子が僕の方へ顔を向けた。
僕はビクッとして身体中から冷や汗が噴き出てきた。
鏡はなくとも自分の顔が真っ青になっていくのがはっきりと分かった。
僕は急ぎ足で自分の席につくと、カバンから教科書を取り出して机の中にぶっこもうとする。
その時、綺麗に四角く折りたたまれたノートの切れ端を机の中に見つけた。
すぐに察しはついた。
中谷裕子だ。
ホームルームの時間となり先生の話が始まる中、僕は恐る恐るそのノートの切れ端を開いていった。
「昼休み、体育館倉庫に来て」
それだけが書かれていた。
その時は若干拍子抜けしたが、それから昼休みまでの間、
彼女が友達やヤンキー達を引き連れて待ち伏せしているのではないか、
包丁を隠し持っていて僕を殺そうとしているのではないか、
僕を脅して金を巻き上げようとしてくるのではないか、
あの時のセックスが忘れられなくてまた僕とセックスしたいと思っているのではないか、
などとまたありとあらゆる妄想を巡らせては勝手に疲弊していた。
4限目終了のチャイムが鳴り昼休みとなる。授業の内容は全く頭に入っていない。
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