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確かに、僕は自分の人生が転落していくであろう恐怖からその足取りは果てしなく重く、限りなく遅いスピードで体育館倉庫への道のりを歩んでいた。
「ごめん!あの時は!どうかしてたんだ!本当にごめんなさい!」
僕はその場にひれ伏して土下座で中谷裕子に必死に謝っていた。
あの時の僕の本心は自分でもよく分からないが、ただ、あの時はああするしかない気がした。
僕は体育館倉庫の床に額を付けたまま顔を上げなかった。
数10秒だったか、数分だったか、長い沈黙が続いた。
「どうしてあんなことしたの?」
「ごめん!」
答えになっていない答えを言う。
それからまた長い沈黙が続いた。
「もういいよ。」
「今回のこと、別に騒ぎ立てるつもりはないよ。私も変に騒ぎになったりしたら過ごしにくくなるし。」
僕はその言葉を聞いて胸の中の重く苦しい不安が一気に取り除かれた気がした。
神様なんて普段は信じてないが、神様に感謝したくなった。
しかし、それでも僕は中谷裕子の顔を見ることはできず、額を体育館倉庫の床につけたままひれ伏していた。
「ただ、少しショックだった。田中君のこと、少し嫌いになったかも。」
それは当然だ。レイプをしたんだから。レイプだ。憎まれて当然だ。
と思いつつも、嫌いになった、という彼女の言葉に僕は少し胸がズキンと痛むのを感じた。
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