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「全部はうまく話せないから、手紙書いた。後で見て。」
彼女は手紙を入れた封筒をひれ伏している僕の顔の横にそっと置いて、体育館倉庫から立ち去って行った。彼女が去ってしばらくすると、僕はただ最悪の事態は回避できそうなことに歓喜して、土下座の体制から勢いよくジャンプすると、
「しゃーーーーーーーーー!!」
と大声を出してガッツポーズを決めた。
昼休みが終わり、5限目と6限目の授業も終わると、僕は急ぎ足で家に帰った。
中谷裕子からの手紙はまだ開けていなかった。
自分の部屋で一人、心静かに読もうと思ったからだ。
ハサミを使って封筒を慎重に開けると、中身の便箋を貪るように読んだ。
「田中君、先週の金曜日、どうしてあんなことしたの?
すごくびっくりしたし、怖かった。
田中君は大事な友達だし、これからも仲良くしたいけど、
少し嫌いになったかもしれません。」
僕は胸が痛んだ。手紙の文章は続く。
「どうしてあんなことしたのか、そして何も言わずに行ってしまったのか、
ちょっと悲しいです。
でも、田中君のことは嫌いになりたくないし、今の学校生活を壊したくありません。
だから、私は今回のことは忘れます。
忘れて、何もなかったことにします。」
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