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僕の右手中指から薬指までをきつく握る小さい手。君の手が汗ばんでいるのは、置いていかれまいとして早足になっているためだろう。
歩調を落とさなければいけないとわかっているのだが、なかなか加減が効かない。君の成長ぶりがあまりにも嬉しくて。
君が産声をあげてから数年の時が経った。我が家には君との思い出を記録したアルバム用の棚が置かれた。
けっして広い家ではないけれど、置いたことで手狭に感じることはなかった。
アルバムを開けばあの時の君がいて、そのほとんどが涙濡れで。それが今ではどうだ、汗を輝かせ笑っている。君の二歩分はある僕の一歩についてくる。この成長ぶりが嬉しくなくて、なんとする。
今度の誕生日には自転車を贈ろうか。練習場所は川沿いの公園を推そう。若干、足場は悪いが遊具が少なくて場所をとりやすい。
君が自転車に乗られるようになれば、どこまでいこう。どこでもいいか、肌を撫ぜる風の性格の多様さと、人にも同じことがいえることを知り、楽しむことができたなら。
ーーともに。
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