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その日、話を終えた彼らは街に出た。
家に食べるものがなくいつもは日曜に帰ってくる父も昨日は帰ってこなかったからだ。
少年は彼女に姉が昔使っていた中学の制服を貸し与えた。
他に残っている服もなくあの装束で街を出歩くわけにもいかないので仕方なく彼女に当世風の装束を来てもらった。
家を出てから少年は気付いた。
家で待ってもらってもよかったのではないかと。
彼らが行ったのははっきりいってデートだった。
スーパーで買い物を済ませた帰り、隣接するゲームセンターに少女は興味を示した。
少年は物珍しそうにする彼女に対し少しだけならとゲームセンターに寄ることを良しとした。彼自身もゲームセンターは数年ぶりであった。
少女が興味を示したのはUFOキャッチャーとプリクラ、それから対戦格闘ゲームの筐体であった。
UFOキャッチャーに関しては少年が帰ることを忘れて付き合ったため景品のぬいぐるみはとれたがそれでも出費は大きかった。プリクラも少女が無茶苦茶に落書きしたため第三者が見たら苦笑いするようなそんな出来に仕上がった。
他プレイヤーと勝負した対戦格闘ゲームはいわずもがな地元の強者に負けた。
それでも少女にとってはこのゲームが一番のお気に入りのようであった。
夕方ゲームセンターから帰る道すがら少年はふたり分の缶ジュースを買った。少女は少年が笑っていることに気づいた。初対面で会った時とはちがう年相応の少年の。
そしてそれを飲みながら他愛もない会話をして、家の前につく。
少年は鍵を開け、少女は揚々と家の中へ入る。
その時だった。
少女の体は何もない空間へとけるように消えていき咄嗟に少年は手に持っていた缶ジュースを落とす。
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