夏が来る

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竜弥は手渡された背番号とユニフォームをじっと見つめた。 ――よかった……。 そしてぎゅっとそのユニフォームを抱きしめた。 甲子園の切符をかけた夏の県大会。 昨年、竜弥たちの学校は参加部員が足りずに不参加だった。 他校との連合チームでいいから参加したいと、唯一の3年生と一緒に顧問に訴えたが、近隣には連合を組めるような学校がなく、諦めざるを得なかった。 そのまま、"夏"を迎えることなく3年生は引退。 さらに人数が減ってしまい、以来公式戦にはずっと参加できなかった。 そして待ちに待った春――3名の新一年生が入部してくれた。 それでも竜弥たち新三年生2名と、2年生3人では9人には満たない。 あと一人。あと一人いれば大会に出られる。 どうしても最後の夏の大会には出たいと、竜弥ともう1人の3年生・亘は、クラス中を回ってあと1名の部員を求め必死で探した。 一年前、一緒に涙を飲んだ後輩――2年生――も一緒になって助っ人探しをしてくれた。そしてようやく、後輩たちが小学校の頃野球をやっていたという奇跡の助っ人を見つけてきてくれたのだ。 夏の間だけという条件付きだが、これで9人揃った。 ポン、と肩を叩かれハッとして振り向くと、そこに目を潤ませた亘がいた。 「亘……」 そう言うだけで精いっぱいだった竜弥に、亘はにっこりと微笑んで頷いた。 やっと、やっと―――俺たちの夏が、始まる。
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