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〇走る蒸気機関車・外観(昼)
黒煙を上げる快速列車。
その行く手に見えるのは――魔法の大都市だ。
〇同・内
書類を読む青年が一人。
格式ばった自警団の制服姿のパルム・パーゲイズ(20)である。
パルム「辞令、パルム・パーゲイズ殿。貴官を4月1日付けで自警団ホーリーランド支部、魔術部隊隊長へ任命する」
へへへと笑うパルム。
パルム「ホーリーランドといやぁ、魔法の聖地、魔術の都。この若さで隊長とは僕もエリート街道まっしぐらだな。ハハ……」
ふと、車内を見渡す。
車内は老若男女様々な乗客で溢れている。
列車の前ではガイドの女の子、シャロン・シャンクリー(18)が説明をしている。
シャロン「みなさん、右手に見えますのが、旧ビッグブリッジでございます」
右手奥に、クラシックな橋が見える。
シャロン「かつて貿易の中心だった橋ですが、大規模な土砂災害を機に安全面から現在
は立ち入りが禁止されています」
パルム「へぇ……」
ガラの悪い男の声「それは違うな」
パルム「?」
ガラの悪い男「立ち入り禁止の理由は侵攻だ。度重なる魔物の侵攻に備えて見晴らしの悪い山側から現在の海側に建設されただけだ」
シャロン「そ、そうなんですね」
ガラの悪い男「常識だぞ」
シャロン「失礼しました」
パルム「……」
嫌な空気が流れて、車内が、しんと静まり返る。
〇ホーリーランド駅前・外観
中世風の建物が立ち並ぶ。人通りは多い。
〇同・市街地
シャロンが観光客を先導している。
シャロン「ここ、ホーリーランドは研究所から商業施設まで様々な魔法機関が存在します。特に自警団支部のある第3地区は魔法特区として有名です」
ガラの悪い男「何が有名なんだ?」
シャロン「はい。自警団があって、魔法の研究が盛んでして」
ガラの悪い男「そうじゃないだろ。かつて第3地区には世紀の大魔術師メーガンベイツの居城があり、そこを中心に弟子たちが家を構えていったんだ。そういう由緒正しい歴史を説明しないで、何が有名だ」
ぐちぐち言うガラの悪い男。
そして、また嫌な空気が流れる。
ガラの悪い男「おい、聞いてんのか、ねーちゃん」
パルム「(さすがに)ちょっと」
シャロン「――すごいです!」
パルム・ガラの悪い男「!?」
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