第1話

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   緊張の瞬間。そこにあるのは――平積みされた2冊の分厚い魔術書だ。 パルム「魔導書ですか」 フィール「これは、かの大魔術師メーガンベイツが残したとされる魔導書だ」    フィール、2冊の魔導書を手に取る。 フィール「魔導書は使用者に絶大なる魔力を与えるとされている」 パルム「絶大なる魔力……」 フィール「悪魔の力か、神をも超えるか。一夜にして街を火の海にしたと言う記録もある」 パルム「魔導書1冊でですか!?」 フィール「うむ。……多分。恐らくは」 パルム「(『適当言ったな』)……」 フィール「しかし、これが結構、曲者でな。魔力が絶大な分、使用者を選ぶ」 パルム「どういう事ですか?」 フィール「早い話が使えるものがいないのだ」 パルム「……それじゃ、意味がないじゃないですか」 フィール「試しに使ってみるか?」    と、2冊の魔導書を渡す。    受け取るパルム。何気なく、そのうちの1冊を開く。 パルム「こうしてみると普通の魔導書だ」    恐る恐る捲るパルム。 パルム「ん?」    その時、背後に違和感を覚えて、ゆっくり振り返る。    そこでは、なんの前触れもなく、灼熱の炎がメラメラ上がっている。 パルム「うわっ!?」    慌てて上着を脱いで、バサバサ炎を消そうとする。 パルム「何で炎が!」    しかし、炎はどんどん部屋中に広がっていく。    パルムはじわじわ部屋の隅に追いやられ、逃げ場を失う。 パルム「マジかよ……」    そして炎はパルムの足元を伝い―― パルム「うわあああああ!」    その悲痛な叫びが響く!      ×     ×     × パルム「!?」    ハッと目覚めるパルム。    辺りを見渡すと、何も起きてはいない。 パルム「し、司令……」 フィール「今のは幻だ。魔導書は使用者を飲み込み、幻想を見せる」 パルム「そんなの、扱えるわけないですよ」 フィール「確かに、並の人間には扱えないだろう。だが、並がいるなら上もいる」    意味深に笑うフィール。    怪訝なパルム。    フィールが棚に視線を送る。    パルム、視線をたどって棚をよく見る。 パルム「これは……3冊分のスペース?」    棚には、3冊収めてあったと思われる形跡がある。 〇ホーリーランド・市街    シャロンが観光客を引率している。
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