思い出

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思い出

 大雨の日。  その日は、夏休み中のプール開放日があったのに、夕立のため途中で帰ることになった。  帰宅途中、プールバックを片手に担ぎ、雨の中を濡れるのが気にならなくなってからは、友達と雨の中を遊んでいた。    夕方の3時前だというのに、厚い雲のせいでとても薄暗い。  大雨に打たれ、周りの大人達に心配されても、笑いながら走り回り、最後の友達を団地の階段で見送って、帰ろうとした。 「--!!」  眼の前が一瞬にして真っ白になった。  次の瞬間、風とは比べ物にならないほどの空気の壁が、体にぶつかる。  目に見えない壁は、足が少し浮いたような気持ちにさせ、腰が抜けて尻もちをついた。  大きな爆発音は、駐輪場の屋根を共振させて、鳴り止まない。  まるでこの世のものではない、魔王でも降りてきたかのような光景だった。  小学校低学年には、何が起きたのか理解できず、次にもっと大変なことが起きるのではないかと、その場から逃げ出すしかなかった。  屋根までコンクリートで作られ、扉は横スライドに開くゴミ集積場所。初めて入るその場所は、電気をつけるスイッチの場所などわかるはずもなく、真っ暗な闇が広がっていた。  外では、遥か空の上で、今か今かと降りる準備をしている、魔王の怒号が聞こえてくる。
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