思い出

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 遠くの方で声が聞こえる。必死に何かを探している声が。 「あぁ! 見つけた! こっちにいたよ!」 「大丈夫!?」  闇の世界は、一瞬にして真っ白な光になった。暗いところに慣れ始めた目には、急な光に対応できずに、まるでそこに天使が話しかけているかのように、後光がさしている。  自分の名前を必死に呼ぶ友の姉は、少し涙声で、その手には、さっき尻もちをついて忘れてきた、プールバックが握られていた。  友の姉に、優しく抱きしめられた。    夏の夜の匂いがした。
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