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そこだけ附に落ちなかった。それでも彼らは虐めのテンプレの準備を着々と進めた。文化祭以上にクラスが一丸となっていた。しかし、俺はどうしても彼らにうまく乗れず、彼らはその原因を親友に裏切られた哀しみとまだ信じていたいと云う希望ゆえだと勘違いしていた。それでよかった。でもきっと違った。
「あっ。」
水曜日。朝霧の停学が解け、朝霧はいつもどおりの時間にいつもどおり登校してきた。その様子を誰かが目ざとく見つけ、朝霧を指差す。それが合図だった。
「うわー、クズ霧が来たんですけどーwww」
「あいつ部活荒らしたんだろ?ほんまねーわ。」
「もういらないんじゃね?僕はクズ霧でーすwww」
言葉の暴力。その嵐の中心には表情を変えずに歩く彼。まるでこちらの声が聞こえてないような、完全な無視。そんな彼の状態に変化が訪れる。俺の方からは少ししか見えなかったが、彼の体が曲がったように見えたのだ。
「いーち!」
バコッ
「にー!」
ガコッ
「さーん!」
ズガッ、ゴキュッ
勘違いではなかった。彼は、朝霧は集団リンチにあっていた。朝一から殴られて、罵倒される。でも彼はこの程度では傷一つつけられやしない。正直、観ているだけの俺の心は既に押し潰されそうだった。虐めに関与していないクラスメートもその光景に眉が寄っていた。それでも俺らは何もできない。今出ていったら確実に朝霧と一緒にいじめられる。その恐怖が俺を机から動かさなかった。それに彼に対するあの暴力はきっと日常の一部分でそう変わらない。ただ人数が増えただけ。その証拠に朝霧は口元を少し緩めている。俺では救えないのだ。
今日もその次の日もそのまた次の日も彼は学校に来て、授業の代わりに暴力ばかり受け、彼は帰っていった。彼らの暴力は日に日に増して、俺は戸惑うばかり。何もできない。あの半袖の下の白い肌がもう見えない。ヒマワリのような笑顔がもう隣にはない。暑いと言いながらうるさいと喚いた日常は戻ってこない。そう。
“全ては夏の幻想のように”
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