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「どうした?」
「え?い、いや何でもない。」
朝霧の声に俺は現実に帰還する。今俺は何をしようとした?朝霧の頬に伸びた手を下ろす。朝霧に触れようとしたのか俺は。友達でもないのに。疑問に疑問が重なって俺は朝霧を放ったまま、考える。
「ねぇ、白河君。」
だから朝霧の突然の声に俺はとても驚いた。彼は俺が考えている間どうやらスマホをいじっていたらしい。空になった弁当を綺麗に包んで彼は立ち上がる。俺はその動作をただ見ているだけだった。
「友達ごっこ、辞めない?もう飽きちゃった。」
彼はそう言ってまたあの日のような笑顔で笑う。俺は今だからわかる。これは…作り笑いだと。何かを必死に押さえ込むようにして笑っている彼の姿なのだと。蝉がうるさくて彼の言葉を遮ってくれればいいのになんて俺はあのとき思ったんだ。
「もう友達じゃないからさ、」
けれど次の言葉で俺は動けなくなる。
止めることができなくなる。
“もう僕に近づかないで”
きっと何かがあのときに狂ってしまって。もし俺が白い腕を掴んで止めていたらなんてたらればは通じない。事実は俺は朝霧の細い腕をつかむことなく朝霧は俺の前から姿を消し、教室に帰った俺は朝霧の不可解な行動の理由を知ることとなる。
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