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2 蠍
刀の男の事件とほぼ同時刻―――
「面白ェじゃねえか」
男が言った。男は、放送局から北に約100㎞先に位置する、犯罪集団「鬼頭会」所有の10階建てマンションの最上階、鬼頭ヨシカズの部屋で、放送局での一部始終を映像で見ていた。男が座っていたのは「鬼頭会」所属の犯罪者たちの死体の山の上であった。その横でもがいているのは、口をガムテープでふさがれ、両手両足をひもできつく結ばれた「鬼頭会」リーダー、鬼頭ヨシカズである。
「鬼頭会」に惨劇をもたらしたこの男は上半身裸であり、その筋骨隆々の肉体には返り血が付いていた。背中には巨大な「サソリ」の入れ墨が施されており、この男も自分のことを「蠍」と名乗った。
「アンタも見ただろォ?あの刀の男、とんでもねえ速さだったぜ」
蠍はテレビを見ながら言った。鬼頭の顔は絶望に満ちていた。この蠍という男然り、映像の男然り、自分の理解を完全に超えている。そんな出来事を連続して体験した鬼頭の頭は思考を停止していた。
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