2 蠍

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「だがなァ、戦いはまだ始まったばかりだぜ?斬られた男も、斬った男も、勝者は一人だってのに、こんなに早く自分の力を見せびらかすってのはよっぽど、腕に自信があるか、バカなのかの二択だ。結果を見るに、ガスマスクの奴らもアンタらもバカだったみてえだなァ」 そう言うと蠍は鬼頭の口のガムテープをとり、シャツの襟を片手で掴み、体ごと持ち上げた。鬼頭は必死にもがいたが、蠍の異常な力の強さの前には逃げ出すことなど到底不可能であった。 急に着信音がなった。それは蠍の携帯電話であるらしかった。鬼頭を持ち上げながら蠍は電話に出る。 「『蠍』だァ。ああ、ああ、いやまだだ、わかった。ちょっと待ってくれ」 蠍がこちらに電話を向ける。 「依頼主だ。最期だし何か言っとくかァ?」 鬼頭には依頼主が誰だかわかっていた。「ボス」である。鬼頭は以前は「ボス」の部下だったのだが、組織の金を横領した挙句、何人かの部下を連れて身を隠したのであった。鬼頭はまだ、死にたくなかった。最期だなんて、冗談じゃない。鬼頭は電話に向かい震える声で話した。 「ボス、俺が悪かったんです。俺が間違っていました。一生かけて償いますから、命だけは助けてください。お願いします」 蠍が電話を替わる。 「ああ、ああ、わかった。伝えておくぜェ」 蠍は電話を切った。 「アンタの『ボス』からだァ。『豚が何かわめいているが、豚語は通じん』だとさァ。残念だったなァ。じゃあな」     
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