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通夜が部屋で行われたのを見て、葬式はなんとなく少人数でやるのだと思っていた。家族葬ってやつだ。
予想は当たった。きのう来てくれたなっちゃんと担任の先生は、ここに居ない。代わりに、普段あまり会うことのなかった親戚たちが、ここぞとばかりに集結していた。懐かしいなあ。みんなどういう風に暮らしてたのかな。
そんなことを考えていたら、きのうと同じような恰好の裕太が焼き場前に現れた。パパの前で、「オイアウ」と口を動かしている。はいはい、「おじさん」て言ったのね。それは許したげる、だってほんとにおじさんだし。
人間の遺体を焼くという行為を、わたしは見たことがある。おじいちゃんが死んだとき、こうやって何かものものしい扉の前で全員が沈黙し、炉のなかに大好きだったひとのからだが吸い込まれていくという状況を経験したことがある。
ただ悲しかった。おじいちゃんが文字通り無くなってしまうのだから。
じぶんの場合はどうなんだろう。わたしは悲しいというより、からだが焼かれて骨だけになってしまったら今のこの意識はどうなるんだろうと、そっちのほうが気になっていた。
いつの間にかひっそりと炉に吸い込まれていくわたしの入った棺。ママの顔はいま見ることができない。辛すぎて。代わりに裕太の顔を見た。
裕太は遠い目をして、しばらく炉の前から離れることはなかった。
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