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わたしは、誰よりも『おとうさん』に愛されていました。
わたしと『おとうさん』の間に血の繋がりはありません。
けれど、『おとうさん』と血の繋がった子供以上に、わたしは愛されていました。
『おとうさん』は実の子供に対しては厳しく、時には握り拳を振るうこともありましたが、わたしに対してはそんなことをすることが一切ありませんでした。
どこか不機嫌そうな時も、なぜか哀しそうな時も、わたしが心配して傍にいくと笑顔を浮かべて撫でてくれるのです。
わたし以外にも、同じ年代の子供たちがこの家にはたくさん住んでいます。
『おとうさん』はそのみんなに分け隔て無く、優しく接してくれていました。
でも、その子たちと比べても、やっぱりわたしが一番『おとうさん』に愛されていることは間違いありませんでした。
朝は必ず最初にわたしのところに来てくれましたし、よそってくれるご飯もいつもわたしが一番多かったのです。
そして「みんなには内緒だぞ?」と楽しそうに笑いながら、デザートの果物を一個おまけしてくれることもしょっちゅうでした。
身支度を調える時には、一番時間をかけてブラシを通してくれましたし、身体のマッサージも一番熱心にやってくれていました。
大好きな『おとうさん』にそうしてもらえるのが嬉しくて、わたしはいつも上機嫌でいられたのです。
運動の時間はとても楽しい時間でした。
基本的に『おとうさん』がわたしたちにノルマなどを課すことはなく、外で自由に遊んでいていい時間帯です。
わたしは特に大事にされていたので、他の子たちのようにみんなとおいかけっこやとっくみあいの喧嘩はできませんでしたが、その代わり『おとうさん』がいつも傍にいて一緒に歩いてくれました。
適度に走り、歩き、また走って、歩いて。
『おとうさん』は汗だくになりながらも、わたしの運動に付き合ってくれたのです。
夜になったら家に帰って、疲れた体を横たえて眠りにつきます。
そんな幸せな毎日を送っていました。
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