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そんなある日、いつもの日課を終えて家に帰って来たら、『おとうさん』がわたしだけをみんなとは別にして、連れ出してくれました。
わたしが大人しくついていくと、『おとうさん』は特別な部屋の扉を開け、わたしにそこに入るように言ってくれました。
そこは特に可愛がられていた子たちだけが、入ることを許された部屋でした。
わたしもついにその部屋に入れるようになったみたいです。
実はその部屋のことは前から気になっていて、一度入ってみようとしたら『おとうさん』にやんわりと止められてしまいました。
その時はどうして私は入れてくれないのか、不満に思っていました。
この部屋に入っていった誰よりもわたしの方が愛されているのは明らかでしたのに。
けれど、とうとうその部屋に入れてもらえることになったのです。
やっぱり、わたしは誰よりも愛されているのです。
誇らしい気持ちで『おとうさん』に促されるまま、わたしはその部屋の扉をくぐり抜けていきました。
部屋に入ったわたしの後ろで、『おとうさん』が扉を閉めました。
――その扉のプレートには『屠殺室』と書かれている――
おわり
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