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兄が急な出張で帰れない日があった。
同居人の大槻さんと二人きりの夜になるが、相手は怪我人だし、何事も起きようも無いってもんだろう。
たとえ兄がメールで
『奴と愛を語るならチャンスだぞ!』
なんてふざけた文章を送ってこようが、何事も起きる筈も無い!!!
現に彼は早々と寝る、と部屋に引き上げた。
私も後片付けや風呂を済ませ、部屋にこもる。
大槻さんは一階の奥の和室で、私は二階の自室だから、部屋に入ってしまえばお互いの動向は分からない。
明日の食事のメニューや、作る手順等を考えていると、夜中の12時になろうとしていた。
二階にあるトイレで用を済ませ、寝ようと廊下に出たら、階下から小さな音が聞こえた。
大槻さんもトイレかな?
のどでも渇いたかな?
そう思い、階下に降りてみた。
果たして、お水を飲みに、と言う事だったので、一緒に麦茶を飲んだ。
ーーーーーそして、彼が転びそうになったので、支えなければと思い抱き止める形になった。
「もう、気を付けて下さいよ。」
と言って彼を見上げれば、目の前の至近距離にある彼の顔のドアップ。
少し顔を傾ければ、触れあいそうな唇。
驚いた顔に男の色気が混ざり出し、このまま流されても良いかなと思ってしまう。
女として求められたい、そんな気になった時。
「悪い、寝よう。」
そう言って離れて部屋に戻って行った。
、、、、、もう少しで流されてしまいそうだった。
疲れた頭を休める為、私も二階の自室へと引き上げたのだった。
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