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退院に当たって、ひと悶着あった。
俺のアパートに帰っても独りなので、不自由なのは分かりきっていた。
責任を感じてか、山元が自分の家に来いと言ってくれたが、それも又落ち着かないのは目に見えていた。
『今、妹と住んでるんだ。
部屋数はあるし、食事は妹が用意してくれるから是非、来てくれ!』
そう言われて、妹さんに迷惑をかけるのも悪いと思ったが、連れて帰らないと妹に殴られると涙目で言われたら、数日だけでも世話になるか、と思い直した。
そして、今目の前にあるのは古いけど落ち着いた趣のある一軒屋だった。
「お前、ここに住んでんの?」
「ああ。祖父母の家だったんだけど、人が住まなくなったら傷むからな。
ただいま。」
「お帰りなさい。
いらっしゃいませ、大槻さん?」
明るい声の女性が出迎えてくれた。
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