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会社に着くと皆が心配してくれてたようで、声を掛けてくれた。
付き添う女は誰?って目をするが、特に聞かれもせず、自分のデスクまで来る。
課長が向こうからやってきてくれた。
「大槻くん、災難だったね。
無理せず頑張って下さい。
君が山元くんの妹さん?
うん、聞いてるよ。」
「はい、山元和恵です。
よろしくお願いいたします。
私はどちらの席を使えばよろしいですか?」
「ああ、大槻くんが不自由しないよう、隣を空けておいたから使って下さい。
仕事は大槻くんの指示に従って。」
どうやら、俺の隣の奴を追い出して席を作ってくれたようだ。
悪い事したな。
隣だった奴には今度、コーヒーでもおごるか。
久々の仕事だったが、山元たちが頑張ってくれていたようで、書類山積みという訳ではなかった。
ブランクがあった為、戸惑いはしたが、割とスムーズに進める事が出来た。
そして、驚いたのが、山元和恵の能力の高さだった。
アシスタントだなんて言っても何をさせればいいんだ?と頭を抱えていたが、何をやらせても理解してこなしてしまうのだ。
「山元、お前の妹、本当にフリーターだったのか?」
「ああ、まあな。
和恵のヤル気スイッチが入ったらヤバイだろ?
何でもこなすんだけどムラがあって、飽きっぽいんだよな。
天才肌っていうか、ヤル気のオフ時は使い物にならなくなるんだよ。
だから今までフリーターで転々としてた。
大槻、お前、あいつの事捕まえておく気あるか?」
「捕まえるって、何だよそれ。
結婚でもさせる気か?」
「それでも良いぞ。
あいつの事気に入ったなら、口説き落とせ。」
「ばーか、まだ会って数日だぞ。
化けるのが上手いって位の感想しか無いわ。」
結婚。
その単語が俺の心に突き刺さった。
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