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山元和恵は、短期のパートで働く事になっているらしく、午後四時には帰って行った。
彼女のお陰で仕事が随分とはかどっていて、今日明日中に済ます予定の仕事のほとんどに目処がついていた。
確かに、他に流出させるには惜しい能力だった。
会社からタクシー券を渡された。
そこまでしてもらう訳にはいかないと固辞したのだが、労災だから通勤に不自由がないようにと諭され、有り難く受け取る事にした。
タクシーで帰らないならば、社長の公用車を出すと脅されたのも大きいが。
朝は基本、山元の車で送ってもらう。
帰りは山元が残業の事が多いので、タクシーで帰る事になった。
和恵さんがサポートについていなければ、俺も毎日残業確定だったろうから、彼女の存在は大きいのだ。
定時より一時間遅れで退社し、山元の家に帰宅する。
鍵は渡されていたが、いきなり開けて入るのもはばかられ、玄関チャイムを鳴らすと、スエットにエプロン姿の和恵さんが出迎えてくれた。
「お帰りなさい。
お疲れ様でした。
ご飯出来てますから、着替えてきて下さいね。」
「ただいま帰りました。
和恵さんこそ、仕事のサポート、有り難う。
慣れない事で疲れたんじやない?」
「まあ、そうですね。
でも、楽しかったですよ。
明日もどんどん、仕事言い付けて下さいね。」
「頼もしいね。
じゃ、着替えてくるかな。」
階段を上がらずに済むよう、一階の奥にある部屋を借りていた。
和室だが、カーペットが敷いてあり、ベッドが置いてある。
祖父母の住んでた家と言ってた通り、あちこち、年寄りや俺のような不自由を強いられている者に優しい作りになっていた。
トイレや風呂も広かったり、手すりが設けられていたりで、車椅子でも対応できそうな家屋だった。
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