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なんて事はない、夏の日差しが照りつける日のこと。
俺はいつものように、森で狩をしていた。
山の中には、俺たち一族が、獣を狩るための罠が、いくつも張り巡らされている。
どこにあるのか、何があるのかを考えて、移動しないと、自分達ですら危ないことがある。
罠にはまって、命を落とした者も、過去に何人かいたと聞く。
だから俺も、森では緊張感を持って移動するのだ。
切り開かれた道さえ、通っていれば、それを知らぬ者でも危険はないのだが、その日、道を外れてしまったのか、幼き娘が紛れ込んでいた。
(な、なんでこんなところにーー)
俺は思わず絶句した。
背格好からして、まだ七つかそこらだろうか。
ここは危険だと、教えて安全な所まで、送り届けるべきだろうか。
否、娘の服装から察するに、麓の村の一族であろうことがわかる。
それでは、言葉が通じない。我々は、代々山で過ごしてきた民族で、文字というものすら持たない。
彼女の民族は、ここ百年ほどの間に、大陸と呼ばれるところから、移り住んできた民族で、稲作とかいう文化を主体に生活している。
先住民であった我々は、元々山を主体に生活してきたのだが、彼らがやってきたことにより、平地に降りることがほぼなくなってしまった。
(あの民族が、俺たちを山に追いやったんだ、ほっておけば良いさ、罠で命を落としても自業自得だ)
何より出て行っても、我々は顔に刺青を入れていて、近寄るだけで怖がられてしまう。
(だが、あの幼い娘に罪があるのか、ここで見捨てては、同じじゃないのか?)
俺は気になって、仕方がなくなってしまい、彼女を追うことにした。
(危なくなったら、助ければ良い)
そう思い見ていると、彼女は茂みの中に迷い込む。
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