【00】プロローグ

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 スリムなスーツ姿の下に隠された、普段から鍛えられているしなやかな筋肉が存在感を示す。 「私は……(まつりごと)を左右する力よりも、貴方に今以上の幸せを与えられる男になりたい」 「一成(かずなり)さん?」  突然の情熱的な告白に驚いたアザミの唇を、若き当主が再び塞ぐ。  そのままキスは次第に深く濃厚になっていき、濡れた音と共にアザミの鼻から切な気な声が漏れ始めた。 「んっ……ふ……ぅん」  しかし一成は、全身にじわりと汗が滲み出すほどの欲情を自覚しながらも、半ば強引にアザミから体を離した。 「アザミさんが欲しい……欲しくてたまらない……ですが、やはり自分の気持ちにだけは嘘は吐けませんね」  ビジネスの関係としてではなく、人生のパートナーになって欲しいのだという一成の真意を感じたアザミは、服の乱れを直しながら丁重に詫びた。 「その件に関しては本当に申し訳ありません……しかし、俺はそこまで価値のある男ではありませんよ?」
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