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「おや、私の人物を見抜く能力がアザミさんにダメ出しされてしまいましたね」
気落ちしたような一成の演技に、アザミが笑った。
「これは一本とられましたね。ありがとうございます。光栄なお言葉として受け取っておきましょう」
それを聞いて一成が穏やかに微笑みを返した時、この部屋の窓枠同様に美しい彫刻が施された大きな木製の扉がやや乱暴にノックされた。
そして、当主が許可する前に勝手にガチャリと開け放たれる。
そこには、重厚で芸術的な内装の施された邸内とはあきらかに場違いであるラフな服装の青年が、不機嫌そうに立っていた。
この部屋の入り口からは月明かりに照らされた室内の人物たちが逆光となり、青年からはよく見えなかったのだが、二人の距離が近すぎることで状況を理解したらしく、
「はぁ?弟の夜遊びには監視と門限を付けてるくせに、自分は家ん中で堂々とお楽しみかよ?なるほど、確かに門限は気にしなくていいかもな」
と、小馬鹿にしたように笑った。
すると、一成が怒鳴るでもなく静かに口を開いた。
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