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「利紀成、客人の前で無礼は許さんぞ」
アザミと会話していた時とはまったく異なる口調には、殺気すら感じさせるような有無を言わせぬ迫力が込められていた。
「……っ」
まだ少し子供っぽさを感じさせる南賀淵の次男、利紀成が悔し気に顏を歪めてうつむく。
この館において兄の言葉は絶対なのだろう。
そんな緊張感が張りつめた空気を壊すかのように、アザミの楽し気な声が室内に大きく響いた。
「ん?利紀成か?久しぶりだな!随分背が伸びたから驚いたぜ!」
自分の方へ近づいてきたアザミを認識した利紀成が、驚きの声を上げた。
「えっ……あ、アザミさん?」
「へぇ、俺のこと覚えていてくれたのかよ?以前会ったのは二年前で確かオメェは16歳だったっけな。おいおい嘘だろ、俺の身長追い抜かれちまってるじゃねぇか!」
アザミが嬉しそうに、法事で数年ぶりに再会した親戚のおじさんのように一方的にまくしたてる。
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