53人が本棚に入れています
本棚に追加
/62ページ
「おかしいな・・・」
タツヤが不思議そうにバス停を懐中電灯で照らしながら呟いた。
「ん。どうした」
マサルがその呟きに反応した。
「普通さ。バス停ってさ、停留所名が書いてあるだろ。いくら錆びついいるからと言っても、 痕跡ぐらいは残っているものだと思うのだが。全くその跡がない・・・」
マサルもタツヤに言われて、バス停の本来、停留所名が記載されるあたりに懐中電灯の灯りを照らした。
「そうだな。それに時刻表も空欄だ。もしかして、『呪いのバス停』ではなくて、単なる設置前のバス停の産業廃棄物かも知れないな」
「いいじゃないの。これも青春の思い出よ。皆でバス停を背景にもう一枚撮るわよ」
ミチコはデジカメを持った右手を大きく前方に翳した。
「ハイ、チーズ」
「パシャ」
デジカメのシャッター音が静寂した闇夜に響いた。
「さてと、記念撮影も終わったことだし、皆さん、そろそろ帰りますか」
マサルが声を掛けた。
「待って、まだ終わっていない」
ミチコがマサルの解散の合図を急いで打ち消した。
マサルには何のことか分からなかった。
「どういうこと」
「マサルがさっき言ったように、まだ本物の『呪いのバス停』なのかどうかは確かめられていない
最初のコメントを投稿しよう!