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その日の放課後、ミチコ、タツヤ、マミコの三人は理科室に居た。
「なんでオレまで、理科室の掃除させられるのだよ」
タツヤは腕組みをして、あからさまに不機嫌な態度を顕わにした。
「しかたないでしょ。マミが『塩化ナトリウム』と『ナトリウム』を間違えるから」
「それだけで、あのボヤ騒ぎかい」
タツヤには事の成り行きが理解出来なかった。
「あたしもね、あたしもよく分からないのだけど。先生の話では、ナトリウムは水に触れると爆発するらしいのよ。マミは優等生で先生のお気に入りでしょ。それでマミが代表で薬品室から『塩化ナトリウム』のビンを取り出してきたのだけど、『ナトリウム』だったってわけよ」
マミコは二人の会話中、黙々と床一面に散らばった消火薬剤をモップで拭いていた。
言い返したい衝動には駆られたマミコであったが、ミチコ達まで敵に回して、たった一人で理科室の掃除を続ける気力は今のマミコにはなかった。
「塩化ナトリウムって塩だろ、塩。普通、間違えるかそんなものと。学者様の考えることは、全く分からんな」
タツヤは反論の兆しさえ見せないマミコの従順な態度をいいことに、これみよがしに悪態を付いた。
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