第一章 「呪いのバス停」って知ってる

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「マミは、頭はいいのよ。頭は」 ミチコはマミコの弁護を自ら買って出たのだが、マミコにとっては二人に馬鹿にされているとしか思えなかった。 「ミーコ。もうそれ以上は言わないで」 言いたい放題に言われたマミコもさすがに怒った。 「ところで、マサルはどうしたのだよ。マサルは」 タツヤは調子に乗って言い過ぎた自分を反省したものの、ここでマミコに謝って、自分の非を認めるのも場が悪い。代わりに話題を変えて、その場を取り繕う策に出た。 「誘ったのだけどね。塾があるとか言って、帰ったみたい」 ミチコが話に乗って来てくれた。 「全く、アイツ、要領いいから。貧乏クジは皆、オレかよ」 タツヤは演技の締めくくりに、手に持っていたモップを床に叩きつけてみせた。 「そこがあんたのイイとこじゃないの」 ミチコの一言で、タツヤは加害者から被害者への転身がうまくいったことを確信した。タツヤは前屈みになって床に放り出したモップを拾い上げながら、協力してくれたミチコに感謝の意を伝えた。照れ屋の彼らしい表現で。 「ミチコは人をおだてて使うのがうまいのだから。将来は女社長にでもなれば」
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