第1章 盗み出す心

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第1章 盗み出す心

夜の闇を一つの影が走る。いや、二つだ。今、二つに成った。 「待てッー!」 冒険者らしき男が叫ぶ。 二つの影の片方の高笑いが響く。 「このお宝はあたしたち盗賊姉妹ライムミントがいただいた!」 高笑いが響く中闇へと消えていく二つの影。 「おのれ、盗賊姉妹……」 男がこぶしを握り締めながらつぶやく。 すでに二つの影は見えなくなっていた。 そっくりな顔をした二人の少女が向かい合って席に座っている。 「あたしたちの影が薄い!」 釣り目気味の少女が木製のカップを机に叩きつけて言うと、たれ目気味の少女がうんざりした様子で答える。 「急にどうしたの、ライム姉さん」 「最近あたしたちの影薄くない? 盗賊姉妹ライムミントって聞けば東の大富豪が財産を隠し、西の大国が国宝を差し出すような大盗賊でしょ!?」 ライムと呼ばれた少女は酒をかっ食らいながらわめく。 その盗賊姉妹の妹の方であるミントは淡々と言う。 「私たちそこまで有名じゃないと思う」 「だとしてもよ! 最近全然あたしたちの名前聞かないじゃない!」 「最近巷で有名なのは魔盗賊グレイハウンドだよね。よく名前聞く」 その名前を聞いた途端、カッ目を見開くライム。     
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