第1章

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唾を飛ばし、前のめりになりながら、発言を続ける。鼻息も荒い。 「私のすごさ、熱心さ、愛情、情熱を全て、あのぬいぐるみに捧げる為ですよ。苦労して、手に入れた物程、愛着がわきますからね。取れた瞬間の嬉しさは、どんな言葉でも表現出来ない程でしたよ」 満足気な表情で独白を続ける男。興奮のせいか、頬に赤みが差し始めていた。口の両端には、話続けた為か、小さな泡が目立つ。 質問者は、その恍惚とした表情に恐れを抱いた。首元に巻いているネクタイを少し緩め、汗ばんだ両手を握り締めながら、口を開く。 「そこまでで結構です。ありがとうございました」 回答者は満足気な表情から一転。不満を露わにする。 「は?まだ、私の話は終わっていないですよ。今から、ぬいぐるみを取ったテクニック等について、話を……」 「では、失礼」 話を遮り、椅子から立ち上がるときびすを返す。鉄製のドアを開け、廊下の方へと出て行った。 「はあ?ふざけるな!今すぐあいつを連れ戻せ!話は終わっていない!聞いてないのか!」 始めの冷静な態度が嘘のように、両足を振り回して暴れだす男。 後ろに待機していた、二人の警察官に抑えられる。 「くそっ。このガラスさえ無ければ、とっ捕まえてでも、聞かせてやったのになあ!」 目の前にあるガラスに向けて、忌々し気に唾を飛ばしながら、悪態をついた。 廊下に出た男は、溜息をつきながら、喫煙所に向かう。スライド式のドアを開け、喫煙所に入る。 喫煙所に入ると、部下の一人と目が合った。部下は、上司である男の姿を見て、慌てて手元にあった煙草の火を灰皿で揉み消し、頭を下げた。 「お疲れ様です!」 「おう。気にせんで一服してていいぞ」 「あの……例の男はどうでしたか?」 その質問に対し、頭を左手でかきむしりながら答える。 「ありゃあ、駄目だな。自分が何をしたのか、全く分かってねぇ。本当にとんでもない奴だ。遺族の方に何て言えばいいのやら」 「可哀そうですね。あんなに小さな子が」  煙草に火を付けながら、忌々し気な表情で口を開く。 「憶測だが、自分の狙っているぬいぐるみを取られると思ったんじゃないか。子供は、お金も入れず、ただスイッチを押して、遊んでいたらしい」
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