1人が本棚に入れています
本棚に追加
あいつが女の子と話してるのを見るのが嫌。とてつもなく、嫌。
その子の事、好きなの? 付き合ってるの? なんでしゃべってるの? 何を話してるの? なんで笑ってるの? 楽しそうにしないで!
嫌。 嫌。 嫌。
心の中で大声で叫ぶ。
聞こえないように、聞かれないように。
あいつに嫌だと言っても、引かれるだけ。
ちゃんと分かってる。
あいつにとって私はただのクラスメイトで、番号順で日直が回ってきたらしょうがなく一緒に当番をするだけ。
ただそれだけ。
それだけでしかない。
黒板に書かれてる日直の名前を消してしまえば、二人の関係性も跡形もなく消えてしまう。
もしかしたら、あいつは私の名前も知らないかも知れない。
教室の前の廊下で女の子と話していた町田来が教室に入ってくる。
「日直の仕事あと何が残ってる?」
黒板を消し終えた私は振り向いて答える。
「日誌書くだけ」
「そっか、じゃサクッと書いて終わらそうぜー。部活あるし。」
「女の子としゃべってなかったら終わってたのに…。」
「え?」
「ううん、なんでもない。」
やばい。 声にでちゃってた。
「日誌は?」
私の机の上に置いてあるので、黙って指差す。
「お! あれね。」スタスタと私の机に向かって歩くあいつを目で追う。
ガラガラと椅子を引いて私の席に座るあいつを見て、嬉しくなる。
「ペン借りるよー」
「うん。」
「あれ、もうほとんど書いてある。すげえな。」
「うん。 でも町田も一応、感想書いて。 あと名前も。」
「わかった。 今日もいい1日だった。っとこれでいっか。 で、名前ね。… あ、お前のも書いといてやろうか?」
「え、私の名前知ってる?」
「普通に知ってるよ」
「じゃ、お願いします。」
「はいはい。 町田来と本田奈南っと…できた。」
「フルネーム…。」
「ん? 合ってるよね?」
「私のフルネーム知ってたんだ…。」
やばい。 泣きそう。
「お前も俺の名前知ってるだろ。 だから、普通だろ。」
「私は好きな人だから、町田の名前はすぐ覚えたけど…。」
「え?」
「え?…えー! 私今何か言った?言ってないよね? 」
いや、もう絶対言った…。言ってしまった。 咄嗟に自分の机まで走っていく。
「え? お前、おれの…」
「これ、先生に渡してくる。」
日誌を取って、教室を飛び出す。
最初のコメントを投稿しよう!