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1.山の中
西の空が橙色に染まり、東の空が紺色に沈んだ。
一晩過ごす場所をそろそろ決めようと山道を歩く少女の姿があった。厚い焦げ茶の記事の長いフードつきのローブに藍色の長いズボン、分厚い革靴まで合わせて身長が百六十いくくらいだ。髪はフードに隠れていて見づらいが、肩より少し長いくらいの金髪、毛先だけが少し桃色がかっている。
ローブの中には丈夫なリュックと、腰にリボルバー、脚には短刀を下げている。
辺りが闇に飲まれる前に腰に下げているランタンに火を灯そうとした時、どこかで物音がした。魔物の類は追い払っているからいないはず。おそらく人間だ。
耳を澄ますと争う声が聞こえる。
――山賊か。……厄介だな。
野宿をしている時に襲われたらたまったものではない。
腰からリボルバーを抜き取り、自分に気配を消す魔法をかける。ただの人間相手であるならば、このくらいで十分効くはずだ。
足音を消すブーツのせいで、草を踏み潰しても音がしない。
どんどん暗くなる中で、淡い光と多くの声が聞こえてきた。どうやら山賊が一人の男を襲っているようだ。商人らしき男は商品を乗せた馬車を必死に庇っていたが、山賊の1人がサバイバルナイフを振り上げた。
助ける義理はないが、山賊を好きにさせておくのも自分にとってよくはないと判断し、少女は引き金を引く。山賊の脚の数だけ引いた後、悶え苦しみながら地面に倒れている男たちを避けつつ商人の前に立った。
「……なんだ、お前は」
商人は訝しむように少女を見上げる。
「ライゼンデ」
「……旅人か」
「そうよ。脚を撃ったから当分は追ってこないだろうけど、おじさんもさっさとここを離れた方がいいよ」
ライゼンデはランプを取り出し、火鉱石を入れる。少し魔力を込めるとボッと明かりが灯った。
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