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「助けてもらって聞くのもなんだが、何で俺を助けてくれたんだ?」
「別におじさんを助けたかったわけじゃないよ。後で山賊に絡まれたら嫌だから、やっつけるタイミングを見ていただけ」
「そうかい」
アインスは苦笑いをして、残っていたお酒を一気に飲み干す。
「約束した通り、馬車で寝ていい。ただ中身は分かっている通りのものだから、絶対にいじるのは禁止だ。もちろん火気厳禁」
「おじさんはどこで寝るの?」
「俺はここで寝るさ。仕事柄野宿は慣れているからな」
そう言ってアインスは焚火を消す準備をする。
「消すの?」
「本来なら動物よけにつけたままにするんだが、今回は積荷が積荷だからな。寝ている間にドカンの方がずっと怖いさ。それにいくつか周りに仕掛けはしてあるから大丈夫さ。嬢ちゃんもいるしな」
豪快に笑う男はどう見ても神経質に見えないが、それなりに気を使っているらしい。
少女は好意に甘えて荷台に乗り込むことにした。……念のため、荷台の中は調べる。木箱に入ったたくさんの荷物。少し臭い。
他にはおそらくアインスの持ち物と思われる旅道具。食糧。
怪しいものがなさそうなことを確認してから、続いてそっと外を除く。アインスは火を消して、馬車から少し離れたところで横になっている。
経験上、人間は基本的に信用できない。特に正体がバレた後はなおさらだ。
「動きはなし」
荷台に結界石をいくつか設置し、簡易結界を作る。これで侵入者がいれば撃退はできずとも、一時的に行動を制限することはできる。
「……変な人」
寝て起きたら知らないところに運び込まれ、売買されたりしないだろうか。悪い未来を想像しながら目を閉じた。
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