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勁二郎は物思いを振り切り、再度手製のロープを投げた。風圧をものともしないで、ロープはトランクに向かって一直線に空気の壁を突っ切る。まだ届かない。
その時、彼女の手がサスペンダーの先を掴んだ。
先程の鳥だ。艶やかな赤い人工のボディの背に人が跨がり、差し渡し十mほどの翼は羽ばたくこと無くピンと伸びている。
彼女は体をエアブレーキにすると、ゆっくりと機首を起こした。
「違う! 荷の方荷の方!」
勁二郎は手製ロープを手繰り寄せて機体に取り付いた
「後ろ座って」
主人公が座ったのを確認して、
「漕いでくれる? そっとね」
言われるまま、彼女を真似て支柱に跨がり、サドルに尻を下ろした。
これは何だ? 人が空を飛ぶ為の道具のようだけど、……空を飛んでどうしようっていうんだ? こんなもので内地から出て行けるとは思えない。
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