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「ああ、次女のメイアです。あの子、人見知りが激しくて……」
「それに、姉を喪ったばかりですから」
「そうでしたか……」
幼くして家族を喪った少女。その悲しみは両親よりも深く、痛切に刻まれているに違いない。去り際に見せた儚げな表情は、その全てを物語っているように思えた。
「局長の指示を仰ぎ次第、再度お伺いします。それでは」
深々と礼をし、イルスン家を後にするアリアス。夫妻はそれを無言で見送った。彼の後姿が見えなくなると、ほっと胸を撫で下ろした妻を、夫が優しく抱き寄せた。
「大丈夫。俺が絶対に、隠し通して見せるから」
「私だって。絶対、絶対に」
妻は夫の大きな肩に手を回し、彼の優しさに応えるかのように更に強く抱き返した。まるで、心の欠落を埋めるかのように。それを見た次女が、再び扉から恐る恐る顔を出した。彼女の視線に気付くと、夫妻は慌てて抱擁を解き、中腰になって向き直った。
「大丈夫よメイ。恐い人はもう帰ったから」
「さあ、おいで」
ゆっくりと頷き、夫妻の元に駆け寄る。二人に抱き寄せられながらも、彼女は茶色いテディベアを大事そうに強く抱き締めていた。
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