王家の双子

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しかし、王に強く肩を掴まれて阻止されてしまった。 だらだらと滝のような冷や汗がユーリの額を滴る。 「ユーリ、我が愛しの息子よ。ミーアとしてヴェルダニアに渡ってくれないか?」 「はぁ!?!?」 それはもうユーリの心からの叫びであった。 「いやいやいや!無理ですよ!俺は男ですよ!?ご乱心ですか?」 「はっはっはっ!なあに、ミーアが見つかるまでの間だ。バレるようなことに至るまい。」 王は何故か豪快に笑いとばし、ユーリの肩を強く叩いている。 「母上!何か言ってください!」 「……ユーリ。あなたがミーアの双子として生を受けたこと、私は神に感謝します。」 王妃は何故か跪き、神に祈りを捧げている。 このままでは不味い!そう理解したユーリは慌ててフランツに助けを求めた。 「フランツ!父上と母上がおかしくなった!なんとかしてくれ!」 「ユーリがミーアの代わりにヴェルダニアへ……。」 見上げると、何故か上の空で焦点の合わないフランツ。ブツブツと独り言を呟いている。 「ユーリがクロード王子と婚約……。つまり結婚……うっ!」 そして短い唸り声を上げたかと思うと、その場に昏倒した。 「フランツー!?」 「俺の……ユーリが他の男と結婚……ううっ。」 なんとかフランツを起こそうとするが、心ここにあらず。 そんなユーリの肩に、王が手を置く。 「そうと決まればすぐに支度しよう!」 「まままっ待ってください!俺がいなくなるのは不自然ではありませんか!?」 仮にミーアの不在を誤魔化せたとしても、次は王子であるユーリが不在になってしまう。 「それはおかしいですよ!こんなことやめておきましょう!」 ユーリは目に涙を溜めて王に懇願した。 「うむ。ユーリは北の国境防衛基地に視察に行ったことにする。ヴェルダニアにはバレないだろう。」 「いや、でも……!俺っ、女のふりなんか。」 八方塞がりの展開に、ついに涙が一粒零れてしまった。 ユーリは肩を震わせて王を見上げる。 「大丈夫だユーリ!お前にはミーアの侍女であるアンリをつける!彼女に色々と教えてもらいなさい!」 「うわああああ!!!」 ユーリは覚悟した。 この王、本気であると。
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