3373人が本棚に入れています
本棚に追加
しばらく顔を赤らめて、向かい合ったまま俯いている二人。
「……ユーリ、ごめんな。嫌だった?」
「いや、嫌とかでは無いんだけど……想定外で。」
「そうだよな、俺……ユーリの臣下なのに調子に乗りすぎた。」
フランツはユーリに背を向けて、塔の階段へと向かっていた。
その彼の表情がなんだか曇って見えて、ユーリは言葉に詰まる。
「もうちょっと立場を考える。さっきのは忘れてくれ。」
ユーリは唇を噛み締めると、亜麻色の髪を揺らして彼の後を追う。
そして背後から勢い良くフランツの背中に抱きついた。
「!?」
「そうじゃないよ。俺、フランツのこと臣下だとか思ったことない!だから調子に乗ってるとかないし、立場を考えなくてもいいから!」
「ユーリ?」
思ったより強いユーリの腕の力に、フランツは驚いて身体を硬直させている。
「フランツは俺の護衛だけど……それだけじゃなくて幼馴染だし、親友みたいなものだし、兄弟みたいだし、家族だから!」
「どうしたんだよ、急に。」
「だから、俺に気を使ってそんな寂しい顔しないで?」
フランツは肩越しに自分の背中に顔を埋めるユーリを振り返る。
白珊瑚の髪飾りが、日の光を受けて光っていた。
「でもさっきのキスは思ったよりその……意味の有る感じのキスだったから驚いて……。」
目を潤ませているユーリを見て、フランツは彼へと向き直る。
「……俺、ユーリのこと好きだから意味なくキスとか出来なかった。」
「は?」
フランツの指がユーリの細い指に絡められる。
「キスしてる間ずっとユーリのこと好きだって考えてたんだ。」
「……ちょっと、フランツ。何言ってんのさ。」
「本当はこんな気持ち、墓場まで持ってくつもりだったんだけど……。」
フランツの唇が、ユーリの鼻先に落とされる。
「好きだよ、ユーリ。ずっと昔からユーリのことだけが好きだ。」
夜の闇のような深い色の瞳が真っ直ぐにユーリを見ている。
「こんなこと言って、ユーリのことを困らせるだけなのは分かってる……。」
「フランツ……。」
「俺、本当に駄目な奴だ。ユーリの傍にいるだけで良いって思ってたのに、触れたら気持ちを止められなくなった。」
最初のコメントを投稿しよう!