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「年齢はクロード王子より一つ歳上の二十歳です。ミーア王女より六つ歳上。」
「ほう。」
「彼の剣の腕は凄まじいらしく、大陸でも有数の剣士だという噂です。」
「なるほど。」
「そして今はミーア王女の護衛ですが、ハーディテェルツ王国にいた時はユーリ・ユン・ハーディテェルツ王子の側近でした。二人は常に一緒にいたそうです。」
「……ほう。」
クロードがオペラグラスを踏みにじり、レンズが音をたてて粉砕されていく様をリヒャルトは横目で眺めていた。
「どうなさいますか?」
「別に。どうもしない。」
「しかし、クロード王子の婚約者に手を出されたとなったら黙っていられませんよ。」
「彼もまた客人だ。無用なことはするな。」
クロードは踵を返すとソファに足を組んで腰掛ける。
「リヒャルト。」
「……なんでしょう。」
「幼馴染だか護衛だかなんだか知らないが、何年も一緒にいて手を出さずにいた臆病な男に俺が劣ると思うか?」
その言葉に、リヒャルトは灰色の瞳を光り輝かせる。
「いいえ、クロード王子。もちろん貴方の方がミーア王女には相応しいです。」
「ならお前は黙って見ていろ。余計なことは一切するな。」
「クロード王子、格好良いです!嫉妬は恋を燃え上がらせるものですからね!」
「うるさい……騒ぐな。」
呆れ果てるクロードの横で、すっかりリヒャルトは舞い上がってしまっていた。
「いやあ、正直クロード王子も長年見込みの無い片思いを続けていた辺りは人の事言えないとは思いますが……。」
「……おい。切られたいのか?」
「あ、いえ。失言でした。」
クロードが剣に手をかけたのを見て、リヒャルトは笑顔で首を横に振る。
「……俺は、もし近くにいればすぐ自分の物にしていた。」
「はい?何でしょう?」
「だから、この機会は逃さない。それだけだ。」
リヒャルトはその場にしゃがむと壊れたオペラグラスを片付け始めた。
「ふふっ、クロード王子が日に日に情熱的になられて私は嬉しいです。」
「リヒャルト、お前こそ浮いた話が無いが……。」
クロードの言葉に虚をつかれたリヒャルトはオペラグラスの破片を落とした。
「へ?」
「どうなんだ?お前もいい歳だろ。」
「ひえっ……クロード王子と恋の話なんてしたくありませんよ。」
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